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名古屋高等裁判所 昭和60年(行コ)13号 判決

岐阜県本巣郡穂積一八七五番地の一

控訴人

井内孝子

右訴訟代理人弁護士

加堂正一

岐阜市千石町一丁目四番

被控訴人

岐阜北税務署長

大澄忍

右指定代理人

岡崎真喜次

石嶋繁

岩崎恭丈

宮崎洋治

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  控訴人は、「原判決を取り消す。港税務署長が控訴人に対して昭和五八年一月一一日付けでした昭和五六年度分所得税の更正及び重加算税賦課決定の各処分を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文と同旨の判決を求めた。

二  当事者の主張及び証拠関係は、次のとおり訂正、付加するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

(訂正)

原判決三枚目表六行目の「五三年」を「五五年」に、同一四枚目表五行目の「七二・九五平方メートル」を「七一・九五平方メートル」にそれぞれ改める。

(控訴人の付加した陳述)

1 控訴人が本件建物を生活の本拠として居住の用に供していたことは、控訴人作成の昭和五六年三月一六日付け所得税の確定申告書(甲第四号証)、大阪市港消防署長作成の同月一一日付けり災証明書(甲第一五号証)、大阪市民共済生活協同組合作成の昭和五五年六月一六日付け火災共済契約引受証(甲第一六号証)、控訴人が本件建物の畳の表替えをした際の同年三月三〇日付け領収証(甲第一七号証)、控訴人が本件建物の所在する町内会の会費を納めた際の昭和五六年八月一〇日付け領収証(甲第二二号証)及び控訴人が配達を受けた同年度の年賀状(甲第二四、第二五号証)等に控訴人の住所としていずれも本件建物の所在地が表示されていることからも明らかである。これらの書面は、すべて本件税務調査には関係がなく、控訴人が自己の利益のために故意に作成し、あるいは作成させたものではない。

2 控訴人が昭和五五、五六年当時、いまだ井内君男(以下「君男」という。)と正式に離婚していなかつたのは、親の離婚が娘の大学入学に不利になることを危惧したためであり、そのころ、既に控訴人は本件建物以外には居住する家屋がなく、君男からも隠れて本件建物で生活していたものである。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり訂正、付加するほか、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決八枚目裏一〇行目の「原告が」から同九枚目表二行目の「判断していること、」までを削除する。

2  同九枚目表三行目の「甲第五」を「甲第七」に、五行目の「原告」を「原審及び当審における控訴人」に、一一行目の「男性」を「君男」にそれぞれ改める。

3  同九枚目裏三行目の「購入した」の次に「本件建物に程近い」を加え、四行目の「上村某」を「上村精一郎(以下「上村」という。)」に、一〇行目の「五六年七月八日」を「翌五六年七月八日本件建物の買受人である」にそれぞれ改める。

4  同一〇枚目表一行目、五行目、八行目及び一〇行目の各「五五年」の前にいずれも「昭和」を、三行目及び六行目の各「五六年」の前にいずれも「翌」を、一〇行目の「原告」の前に「前記のとおり」をそれぞれ加える。

5  同一〇枚目裏二行目の「娘の学校や原告自身の」を「当時高校三年に進級して大学受験を控えていた長女の通学先や保険の外務員をしていた控訴人みずからの」に改める。

6  同一〇枚目裏三行目の「原告は」から同一二枚目表八行目末尾までを次のとおり改める。

「以上の事実が認められる。右事実関係のもとにおいては、控訴人が昭和五五年三月以降本件譲渡に至るまでの間、生活の本拠にしていた家屋は弁天コーポであり、本件建物は控訴人において管理していたものではあつても居住の用に供していた家屋ではないと認めるのが相当である。

控訴人は、右の当時、既に君男とは別居し、同人に住所を知られないように単身で本件建物に隠れ住み、療養生活を送つていたから、本件建物は、その居住の用に供している家屋であつた旨主張し、成立に争いのない甲第二、第三、第二七、第三一、第三八、第四一、第四四号証、原審における控訴人本人尋問の結果により成立を認める甲第一九ないし第二一号証、第三三号証並びに原審及び当審における控訴人本人尋問の結果中には右主張事実にそうような記載、供述が存するけれども、これら記載、供述は、前認定に供した証拠に対比して直ちに採用し難く、また、成立に争いのない甲第一六号証原本の存在・成立に争いのない甲第一五号証、原審における控訴人本人尋問の結果により成立を認める甲第一四、第一七、第一八、第二四、第二五、第三七、第三九、第四三号証、右尋問の結果により原本の存在・成立を認める甲第三五、第三六証、原審証人山本靖子の証言により成立を認める甲第四二号証、当審証人岩浅嘉道の証言により成立を認める甲第二二、第二三号証並びに右山本靖子及び岩浅嘉道の各証言は、いずれも本件建物が控訴人主張のころ控訴人において生活の拠点として利用していた家屋であることを証するに足るものではなく、他に前認定を覆すに足りる証拠はない。」

二  よつて、控訴人の本訴請求は理由がないからこれを棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却し、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中田四郎 裁判官 日高乙彦 裁判官 三宅俊一郎)

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